kintoneを全社展開し、利活用が進むにつれて「ユーザー数」や「登録されている組織(部署)」が増えていきます。しかし組織が増えることで現場ユーザーに、ある“使いづらさ”が発生することをご存知でしょうか?
特に中小企業では、一人ひとりが複数の役割や部署を兼務することが日常茶飯事です。
本記事では、中小企業現場での業務課題とそれを解決するための手段と、プラグインを活用したスマートな業務改善について詳しく解説します。
kintoneを活用するユーザーや組織が増えると出てくる課題
kintoneの導入初期は「営業部」や「総務部」などシンプルな組織構成で運用が始まります。しかし利用が進むと、拠点別・事業部別・プロジェクト別など組織設定が細分化されていきます。
そこで発生するのが「情報量が多すぎて自分の所属組織のデータに迅速にたどり着けない」という問題です。
レコード一覧画面を開いた際に全社の膨大なデータが表示されると、目的のレコードを探すのに時間がかかります。そのため、「自分の部署のデータだけを絞り込んで表示したい」という現場からの要望が急増します。
ユーザーの所属組織を切り替えてレコード一覧を絞り込みたい
中小企業の現場では、1人が「営業部」と「業務推進部」を兼任していたり、「営業1課」と「営業2課」を兼務していたりすることが少なくありません。
ユーザーが複数の組織に所属している場合、状況に応じて表示するレコードの切り替えが必要になります。
- 自部署の営業記録の閲覧時 → 「営業1課/2課」のデータ一覧を確認したい
- 管理業務でデータ閲覧する → 「総務部」所管のデータ一覧を確認したい
このように、「ログイン中のユーザーが所属している別の組織(兼任先)」のデータにもスムーズにアクセスしたいというニーズが強く存在します。
標準機能で出来ること、標準機能の限界
kintoneの標準機能でも、ログインユーザーの組織情報を使った動的な絞り込みは可能です。
標準機能で出来ること
レコード一覧表の絞り込み条件で「組織選択フィールドに優先する組織を含む」と設定することで、ログインしたユーザーの「優先する組織」に合わせたレコードだけを自動で動的に表示できます。

標準機能の限界
標準機能では、プロフィールの「優先する組織」1つしか自動参照できません。
兼任している別の所属組織で絞り込みたい場合、ユーザーは、自分のプロフィール画面で「優先する組織」を自分で切り替える必要があります(システム管理者による「プロフィール変更の許可」が必要です)。

この処理は、画面遷移を含めて毎回4〜5クリック以上の手間がかかり、日常業務の中で頻繁に切り替えるには非常にストレスが大きいのが現実です。
JavaScriptカスタマイズ
ユーザー組織別表示の課題解決には、kintoneのJavaScriptカスタムカスタマイズも選択肢です。
レコード一覧画面の上部ヘッダー部分に所属組織を選択するドロップダウンを生成し、選択された組織コードに応じて一覧画面のURLクエリを変更してリダイレクトすることで切り替えを実現できます。
デモ画面

デモ画面のJavaScriptサンプルコード
(function() {
'use strict';
// 一覧画面表示イベント
kintone.events.on('app.record.index.show', function(event) {
// 既にドロップダウンが配置されている場合は処理をスキップ
if (document.getElementById('org_switch_dropdown')) return event;
// ログインユーザーの情報を取得
var user = kintone.getLoginUser();
// ユーザーの所属組織を取得(REST API呼び出し)
kintone.api(kintone.api.url('/v1/user/organizations', true), 'GET', { code: user.code })
.then(function(resp) {
var orgs = resp.organizationTitles;
if (!orgs || orgs.length === 0) return;
// ヘッダー要素を取得してドロップダウンを作成
var headerSpace = kintone.app.getHeaderMenuSpaceElement();
var select = document.createElement('select');
select.id = 'org_switch_dropdown';
select.style.marginLeft = '10px';
select.style.padding = '4px 8px';
// 初期選択肢
var defaultOption = document.createElement('option');
defaultOption.text = '-- 所属組織で絞り込み --';
defaultOption.value = '';
select.appendChild(defaultOption);
// 所属組織をドロップダウンに追加
orgs.forEach(function(item) {
var option = document.createElement('option');
option.value = item.organization.code;
option.text = item.organization.name;
select.appendChild(option);
});
// ドロップダウン変更イベント
select.addEventListener('change', function(e) {
var selectedOrgCode = e.target.value;
if (!selectedOrgCode) return;
// 対象の組織選択フィールドコードを指定(例: '所属組織')
var targetField = '所属組織';
var query = encodeURIComponent(targetField + ' in ("' + selectedOrgCode + '")');
// 現在のビューのURLを更新して絞り込みを実行(URLクエリ方式)
var currentUrl = location.protocol + '//' + location.host + location.pathname + location.search;
// 既存のqパラメータを除去・置換してリダイレクト
window.location.href = location.pathname + '?q=' + query;
});
headerSpace.appendChild(select);
})
.catch(function(err) {
console.error('所属組織の取得に失敗しました:', err);
});
return event;
});
})();
JavaScriptカスタマイズの懸念点
カスタムコードの作成・維持管理に専門知識(エンジニアリソース)が必要です。kintoneの仕様変更やDOM構造の変化によるリスクへの保守対応が現場の負担になることがあります。
プラグインで解決できること
ノーコード・ローコードで安全かつ迅速に業務改善を行いたい中小企業にとって、「プラグインを活用する」という選択肢が最も効果的です。
プラグインを導入すれば、プログラミング知識が不要で、設定画面から数項目を選択するだけで課題を解決できます。開発コストや保守メンテナンスの心配をせずに、現場の利便性を即座に向上させることができます。
🧩 プラグインのご紹介
当社が開発した「レコード一覧をユーザー組織で切替表示するプラグイン」をご紹介します。
キンコミのユーザー対象で「無料」ダウンロード配布していますので、ぜひお試しください。

主な機能と特徴
- 所属組織の自動取得&ドロップダウン表示ログインユーザーが所属する組織(兼任含む)を一覧画面のヘッダーに自動で表示します。
- ワンクリックでの絞り込み切替ドロップダウンから組織を選ぶだけで、レコード一覧の表示が瞬時に切り替わります。
- API消費量の最小化(ビューURLクエリ方式)切替処理にはAPIを無駄に消費しない標準ビューURLクエリ方式を採用しているため、API上限を気にする必要がありません。
- 親組織の自動除外(子組織への展開)絞り込み条件として不適切な親組織を自動で除外・展開し、実際にデータが存在する末端の組織のみを選択肢として表示します。
- 「すべて」ビューの非表示オプション全データが見えてしまう既定の「(すべて)」ビューを非表示にし、セキュリティや視認性を確保します。
プラグインを活用した事例
このプラグインは、以下の事例の様に、現場のさまざまな業務シーンで効果を発揮します。
事例1:本社と店舗・拠点を兼務するマネージャーの巡回管理
多店舗展開する小売業や飲食業において、複数エリアを兼務するエリアマネージャーが、ワンクリックで担当店舗ごとの売上・日報データを切り替えて確認できます。
事例2:兼任が多い中小企業の部署別案件・進捗管理
営業とカスタマーサクセスを兼任しているスタッフが、商談管理(営業部)と問合せ管理(サポート部)の一覧をストレスなく切り替えて業務を行えます。
事例3:拠点ごとの顧客・在庫データの管理
複数拠点の在庫を巡回確認する物流担当者が、拠点ごとの在庫一覧を切り替え、迅速な在庫移動や棚卸業務を実施できます。
事例4:役員・管理職による複数部門の縦断チェック
複数の事業部を管轄する役員が、各部門の承認待ち案件やプロジェクト進捗状況を、プロフィール変更なしでスムーズに巡回チェックできます。
事例5:全社共有アプリでの部署別データ閲覧制限・整理
社内問い合わせアプリや備品管理アプリにおいて、自部署に関係するデータだけを素早く抽出し、不要な情報のノイズを削減します。
事例6:自組織メンバーの限定表示・タスク管理
チームリーダーが、自分の兼務する複数のプロジェクトチームごとのタスク一覧を即座に切り替え、チームメンバーの負荷状況を把握できます。
事例7:誤操作防止のための「全件表示(すべてビュー)」の非表示化
新規着任者やパート・アルバイトスタッフが誤って全社データ(すべてビュー)を開いてしまわないよう、「すべて」ビューを非表示にして自組織のデータだけに集中させます。
まとめ
kintoneの活用が進む中で出てくる「兼務組織の切り替えの手間」は、現場のちょっとしたストレスとなり、放置すると業務効率や入力率の低下につながります。
- 標準機能:優先する組織(1つ)の切り替えのみ可能(兼任先の切替は4〜5クリック必要)
- JavaScript:カスタマイズは可能だが、保守・開発の手間がかかる
- プラグイン:設定だけでワンクリック切り替えを実現し、現場の課題を即座に解決
中小企業の現場改善には、「プラグインを活用する」という選択肢が非常にスマートで効果的です。
業務のデジタル化や画面操作のムダ削減を目指している方は、ぜひ「レコード一覧をユーザー組織で切替表示するプラグイン」の導入を検討してみてください。
🔨 関連記事のご紹介
以下のNote記事で事例を標準機能だけで出来る動的絞り込み表示の設定事例を紹介しています。
記事内で紹介している設定事例は、標準機能だけで出来るので是非挑戦してみて下さい。
「note:アプリ活用研究会(キン活)」は、当サイトのメンバーが執筆しています。

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